平成30年改正 使いやすくなった事業承継税制

相続税コラム

岡山の相続税専門税理士の風早です。

平成30年度の税制改正によって大幅に使いやすくなった、新しい事業承継税制についてわかりやすく解説します。

 

事業承継税制ってどんな制度?

事業承継税制とは、中小企業において、経営者から非上場株式を相続または贈与により取得した後継者の税負担を軽減させる制度のことです。

 

なぜ事業承継税制が制定されたかというと、「自社株式」という財産を相続することになった場合、その株式にも多額の相続税の負担が生じるからです。しかも、相続税は原則現金一括納付のため、株式を相続した人は、手持ちの現金がないと相続税の納付が一気に苦しくなってしまうのです。その結果、会社の資金繰りや経営に影響が生じてしまいます。

 

このような事態を防ぐために定められた制度が、「事業承継税制」です。この制度を使うと、なんと相続税も贈与税も100%免除になります。

 

これまで、利用にあたっては様々な条件があり、積極的に利用されていませんでしたが、平成30年度の改正によって大幅に条件が緩和されました。また、新・事業承継税制では、期間限定の手続きが追加されました。

 

  1. 平成30年4月1日から平成35年3月31日までに、都道府県庁に「特例承継計画」を提出していること
  2. 平成30年1月1日から平成39年12月31日までに、贈与・相続(遺贈を含む)により自社の株式を取得すること

 

新・事業承継税制は期間限定の制度になりますので、事業承継を検討中の中小企業の経営者の方は、早めに事業承継の準備にとりかかることが大切です。

 

事業承継税制改正の背景

事業承継税制そのものは、平成21年度税制改正から制定されていました。しかし、適用条件が厳しく、あまり利用されていなかったのが現状です。参考までに、平成21年の制度創設から平成28年3月末時点での認定件数は、「贈与税 626件」「相続税 894件」となっています。中小企業の数は、日本国内で約380万社ともいわれますから、明らかに少ない数字であることがおわかりいただけるかと思います。

 

国としては、日本の経済を支える中小企業の廃業を防ぎ、スムーズな事業承継を加速させたいという思いがあります。そこで、もっと制度を活用してもらうべく、平成27年に一度改正されて要件が緩和します。そしてさらに活発な事業承継を促すために、平成29年12月14日に発表された税制改正大綱で、大幅な条件緩和が発表されたのです。

 

事業承継税制の仕組み

事業承継税制の仕組みを簡単に説明します。

 

経営者から非上場株式を相続・贈与により取得した後継者の負担すべき相続税・贈与税について猶予するものです。ただし、経営者・会社・後継者すべてが税法上の要件を満たす必要があります。

 

  • 経営者:過去に代表株を保有、議決権比率など
  • 会社:資本金、従業員数、特定の業種に該当しないなど
  • 後継者:代表権、議決権比率、役員、年齢など

 

上記それぞれの要件を満たしていれば、税負担が猶予されます。猶予されると、自社株式取得時に相続税・贈与税を支払わなくてもよくなりますが、取得後、雇用の確保などの要件を満たさなくなった場合は相続税・贈与税の支払いが必要になります。これまでは、条件が厳しく、後で支払わなければならないリスクが大きかったため、あまり制度が活用されていませんでした。

 

どこが変わった?事業承継税制改正のポイント

事業承継税制を使いやすくするため、平成29年の税制改正により、要件への緩和などが認められることになりました。

 

税制対象者の拡大

これまでは、代表権を有していた先代経営者1人から、代表者となる後継者1人への非上場株式の承継に限定されていました。平成30年度からは、先代経営者以外から相続・贈与された株式も適用され、後継者も最大3人まで認められることになりました。

 

納税猶予対象の制限の上限を撤廃

これまでは、納税猶予の対象となる株式については、発行済株式の3分の2までとされていました。平成30年度からは、その上限が撤廃され、後継者が取得したすべての株式が納税猶予の対象となりました。

 

納税猶予割合の拡大

これまでは、納税猶予の割合については、株式に係る相続税の80%となっていました(贈与税は100%)。平成30年度からは、相続税も贈与税も100%が猶予対象と拡大されています。

 

雇用確保要件の緩和

これまでは、事業承継税制適用後の5年間、従業員の雇用を80%以上維持しなければならないとされており、従業員数の少ない中小企業にとっては大きなハードルとなっていました。仮に80%を下回ってしまった場合、納税猶予は打ち切られ、猶予されていた税額を、ただちに利子付きで納付しなければならないという厳しいものでした。平成30年度からは、80%を下回った場合でも、満たせない理由(経営状況の悪化など正当な理由)を記載した書類を提出することで、納税猶予がただちに打ち切られることはなくなりました。

 

株式譲渡、会社の合併・解散する場合の納税額減免措置

これまでは、株式を譲渡したり、会社が合併、廃業した場合には、納税猶予は打ち切られ、元々の相続税額または贈与税額を納付しなければなりませんでした。平成30年度からは、一定の要件を満たす場合には、もともとの納税猶予額を上限として、株式売却、廃業時点での株価により税額を再計算し、売却等の株価が特例適用時の株価を下回る場合、もともとの納税猶予額との差額は免除されることになりました。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。難しい話も多いですが、事業承継を検討中の会社経営者の方にとって非常にメリットの多い制度になっていることがお分かりいただけたかと思います。

この新・事業承継税制は、平成30年1月1日~平成39年12月31日までの間に行われた贈与・相続により取得する株式かつ、平成30年4月1日から平成35年3月31日までの間に特例承継計画を都道府県に提出した会社等に対してのみ適用されます。会社の事業承継を今まさにご検討中の経営者様は、ぜひお早めに税理士などの専門家にご相談されることをおすすめします。

もちろん、当事務所でもご相談を承りますので、お気軽にご連絡ください。

この記事の執筆者

風早 昭徳

大手税理士事務所で相続・事業承継の経験を積んだ後に独立。風早税理士事務所の代表税理士。

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風早税理士事務所 代表税理士 風早 昭徳

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